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一週間のしごと

4488017207一週間のしごと
永嶋 恵美
東京創元社 2005-11-29

by G-Tools

スカイエマさんの表紙につられて買いました。好きだ~。

「土曜日に渋谷へ出かけ 見知らぬ子供を連れてきた」
これ、第一章のタイトル。これだけで、なんだかひきつけられてしまったよ。目次眺めてるとつい「♪トゥリャトゥリャトゥリャトゥリャトゥリャリャ~」って口ずさみたくなってしまう。
土曜日に始まり、翌土曜日で終わる、これはまさに「一週間のしごと」の話。
土曜、目の前で母親とひどい別れかたをした子供をつい連れてきてしまった菜加。しかしその子の家で事件が起こり、帰すに帰せなくなってしまう。菜加に頼まれ、恭平は子供を無事に保護者に返すために駆け廻るはめになる。
女子高生の菜加、幼なじみの恭平、菜加の弟のオタク少年・克己、恭平の友人・忍。4人とも、それぞれがそれぞれの事情で警察や大人の助けを借りずに解決しようとし、時には互いに黙って行動を起こし、そのせいで事態は悪い方向へと転回していく。このすれ違いっぷりがまた4人のキャラを際立たせていて面白い。
真犯人はわりと早いうちにわかってしまうんだけど、冷めたりせず置いていかれたりもせず、最後までドキドキしながら読むことができました。
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黄色い目の魚

4101237344黄色い目の魚
佐藤 多佳子
新潮社 2005-10

by G-Tools

表題作「黄色い目の魚」だけ、短編として読んだことがあった。
中学生のみのりは、中学に入って三ヶ月の間に三人の女の子と絶交した。説教したりつるんだり噂好きだったりする同年代の女の子たちと、みのりはどうしてもウマが合わない。
そんなみのりの一番好きな場所は、叔父の通のアトリエ。通は漫画家・イラストレーターで、みのりが描いた黄色い目の魚をモデルにした「サンカク」というキャラクターの出てくる漫画を描いている。
「通ちゃんは、私が一番きらいな、子供扱いをしない。わざとらしいオトナ扱いもしない。説教をしない。」

初めて読んだとき、ちょっと文章が苦手だなと思ったんだけど、文庫になったのを機に、読み返してみようかなと思った。
読んで、あれっと思った。主人公が違う。
一作目、主人公はちいさな男の子だった。両親が離婚して何年も会わなかった父・テッセイに突然会うことになった少年。父親は絵ばかり描いて暮らしてるダメ人間。
そうか、絵を題材にしたオムニバスなんだ、と思った。そしたらそれもまたハズレだった。二作目が上述の「黄色い目の魚」で、三作目、高校生になったみのりと、一作目の主人公の少年・木島はクラスメイトとして出会う。連作短編のように編まれた物語は、つながってふくらんで、一つのドラマになった。あの短編がこんなふうに育つとは想像していなかったので、驚いた。

クラスメイトとして知り合った二人は、絵を通して少しずつ距離を縮める。
みのりに触発されて、木島は本気になる。サッカーに。絵に。
そしてまた、みのりも木島に影響されて、前に進もうとする。
この二人の真摯なぶつかり合いの、なんてまぶしいことか。
要所要所で垣間見えるこの子たちの心のあり方に、ぐっとくる。

そして木島の目を通して語られるみのりが魅力的であることにもぐっとくる。なんだろう、人が人を見るということはすごいことだ、と思ってしまった。
言葉少なに木島の心を理解する。流されず、本当のことを見てくれる。ごまかしを許さない。嘘がつけない。毅然としている。厳しくて、強くて、優しい。(ああ、そんな眼差しを持った女の子に、私もなりたかった。)


……絵をテーマにした話だからか、登場人物の姿が想像しやすい。目に浮かぶようだった。(ちなみに私の頭の中では木島はバンプの藤くんみたいな顔をしてる。藤くんか、藤くんをもっと食えない印象にした感じ。)


さらに、私が気になっているのは通と似鳥の二人。
いつか、この二人の物語も読んでみたい。
「相手を好きか嫌いかっていうのは、自然にわかるんだよ。
 こわいよ。においのように相手に伝わっちまうんだからな」
たいして誰にも関心無さそうな顔をしている通が、過去にどんなことがあってこんなことを言うのか、ものすごく気になってしまう。

つきのふね

404379102Xつきのふね
森 絵都
角川書店 2005-11-25

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「このごろあたしは人間ってものにくたびれてしまって、人間をやってるのにも人間づきあいにも疲れてしまって、なんだかしみじみと、植物がうらやましい。」

人間にくたびれる、という状態を、私は確かに知っている。
この小説の冒頭で呟かれる一文に、私はするりと納得し、ああ、この子は何かに傷つきひどく疲れているのだな、と想像した。

主人公のさくらは中学生。万引きでつかまったのをきっかけに友達の梨利と険悪になる。自分は梨利を裏切ったのだという後ろめたさをはじめいろんな感情が綯い交ぜになって、さくらを苦しめている。
「梨利と仲直りしてほしいから」という理由でさくらにつきまとう同級生の勝田は、さくらに言わせれば「ちょっと変なやつ」。梨利を好きだと言って、二人のあとをつけまわしていた。
勝田から逃げたさくらが向かったのは「智さん」の家。
智はさくらが万引きをしたときに助けてくれた店員で、温和でやさしい青年だった。ただ少しおかしいところがあって、宇宙船の設計図を作るという使命を持っているのだと、スケッチブックに宇宙船の絵を描き付けている。
ある日さくらが智の家に行くと、いつのまにか智とも親しくなっていた勝田がいた。三人は打ちとけていくが、智の「心の病気」はどんどん進行していた。――二人は智を助けるため、行動を起こし始める。

* * *

「心の病気」の話のせいか、ちょうどこの間観たばかりの舞台「トランス」を思い出した。設定もストーリーも見せ方もまったく違うのだけれど、“心を病んでしまった友人を前に、戸惑いながらも力を尽くす”という部分が似ていたのだと思う。

「あなたが何に傷つき あなたでなくなったのか、その悲しみの深さを 私は知りません。
 けれど、あなたが私を必要としていることだけは、私はわかります」
(「トランス」より)

傷つき、疲れ、どうしていいかわからない。
ただいろいろな物に人に、怯えている。
世界を閉ざし、無意識のうちにくるくると壊れていく。
そういう人を前にしたときにできるのは、信じること。
その人と自分との絆を、ただ信じること。
「ぼくわとうといものですか?」という無垢な問いかけが胸に響く。
それはきっと、信じるべき絆の存在を知らしめる言葉であったのだ。
あなたを思う人間がここにいるんだよ、と。
とうとぶものがあなたにもあるんだよ、と。
智をあの場所に向かわせたのも、きっとそういうものの力だ。

誰の心のなかにもきっと、そういうものがあるのだと思いたい。
「自分には何もないのだ」
ちょくちょくそんな思いにとらわれてしまいがちな私だって、きっと、そういう小さくて尊い絆に生かされている。

* * *

そしてまた、「人より壊れやすい心に生まれついた人間は、それでも生きていけるだけの強さも同時に生まれもってるもんなんだよ。」という言葉が心に残った。シビアだけどやさしい言葉だ。

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